若者の飲酒は、中高年と比較して、急性アルコール中毒やアルコール依存症等のリスクが高くなり、事件・事故の関連も深いという特徴があります。その対策としては、飲酒禁止年齢を用いた対策が効果的です。
1. 最近の若者の飲酒傾向
最近の若者は、お酒を飲むようになってきているのでしょうか、飲まなくなってきているのでしょうか。未成年者の飲酒については、1996年から4年ごとに未成年者の飲酒状況の全国調査が行なわれています1-3)。それによると、過去1ヵ月間に飲酒をした経験のある未成年者は減少してきています。しかし、飲酒による補導者数は、明確な減少はみられませんし4)、未成年者にお酒を売ったとして未成年者飲酒禁止法で処罰される人は、むしろ増えてきています4)。また国民健康・栄養調査における20代の習慣飲酒率でみると、女性に限って言えば増大傾向となっています5-6)。このように最近における若者の飲酒傾向については、各調査で異なった結論となっており、一定の見解は得られていません。
2. 若者の飲酒と健康
アルコールは60以上の疾患と関連があるといわれていますが、その中でも若者の飲酒と最も関連の深い疾患として、急性アルコール中毒と、アルコール依存症があります。
1) 急性アルコール中毒
アルコール中毒は血中アルコール濃度が上昇によって、運動失調や嘔吐を伴った意識障害が起こり、身体生命に危険が迫った状態を指します。急性アルコール中毒に関する調査としては、東京消防庁による救急車での急性アルコール中毒の搬送者数調査があります。平成19年の調査では、都内の急性アルコール中毒搬送されたなかで、半数以上の52.8%が十代、二十代の若者でした。では、なぜ若者に急性アルコール中毒が多いのでしょうか。その理由としては、a)
脳がお酒に慣れていない、b)危険な飲み方を好むなどがあります。中には、新入生歓迎コンパ等で先輩にイッキ飲みを強制され重症の急性アルコール中毒となって死亡するケースもあります。近年は大学等でも問題とされるようになり、イッキ飲み防止の取組も広く行なわれるようになっ
てきました。
2) アルコール依存症
アルコール依存症は、基本的には中高年の病気ですが、これにも青年期の飲酒が深く関わっています。15歳以下からお酒を飲み始めた場合、21歳以上からお酒を飲み始めた場合と比べ、3倍以上アルコール依存症になる確率が上がるという報告や8)、初飲年齢とその後の問題飲酒との関係を示す報告9)等、若年者の飲酒と問題飲酒の関連を示す報告が多数あります。また若年アルコール依存症を対象とした調査では、約1年後(平均13.8か月後)の断酒率は15.2%であり、一般的な断酒率の半分程度の値となっています。また同期間内の死亡率も9.2%に上っており10)、中高年と比較しても極端に悪い予
後となっています。つまり若いうちから積極的に飲酒することは飲酒量の増大、アルコール依存症等のリスクを増大させ、かつ飲酒問題が生じたときの予後も悪いという特徴があります。
これ以外にも、脳の萎縮や第二次性徴の遅れ等、多くの
領域でアルコールによる若者の健康への悪影響がみられます。
3. 若者と事件・事故
若者の飲酒の大きな問題として、事件・事故につながりやすいということがあります。スウェーデンで行なわれた調査では、18歳、19歳時点における週の飲酒量と、その後15年間の全体の死亡率は比例しており、その多くが暴行によるものでした
11)。また、若い男性では、35
歳以上の男性に比べ同じ血中アルコール濃度でも単独死亡交通事故を起こしやすくなるという報告や
12)、20歳代の場合、危険運転認知速度(事故直前の
速度)の上昇とともに飲酒運転の割合は上昇するという報告等
13)、若者の飲酒と事件・事故の関連を示す論文・調査が数多くあります。その為、アメリカ合衆国やニュージーランドなどでは若者の飲酒運転防止対策として若者の飲酒運転の基準を成人より厳しく設定しています。
4. 対策
若者の飲酒問題に対しては各国で様々な対策が行われていますが、決定的なものはありません。ただ、飲酒禁止年齢を用いた対策により若者の飲酒問題を軽減することについては広くコンセンサスが得られており、アメリカ合衆国では各州によって異なっていた飲酒禁止年齢を引き上げて統一したことで若者の死亡事故が減少しています
12)。また世界保健機関 (WHO)
でも、若者の飲酒に強い懸念を示しており、その対策として飲酒禁止年齢に関する提言がされています。日本でも健康日本21の中で未成年者飲酒をゼロにすることが目標として掲げられているように、未成年者飲酒防止は飲酒問題対策の大きな柱となっています。一方、近年、成人年齢の引き下げとの兼ね合いで飲酒禁止年齢についても議論が行なわれるようになってきていますが、これは世界の潮流や、飲酒問題防止のエビデンスに反するものであり、今後、慎重な議論が必要です。
提供:e-ヘルスネット 真栄里仁
参考文献
- 箕輪眞澄ほか. 厚生労働科学研究1996年度 未成年者の飲酒行動に関する全国調査報告書,
1997.
- 上畑鉄之丞ほか. 厚生労働科学研究 2000年度
未成年者の喫煙及び飲酒行動に関する全国調査, 2002.
- 林謙治ほか. 厚生労働科学研究 2004年度未成年者の喫煙及び飲酒行動に関する全国調査
総括研究報告書, 2005.
- 警察庁生活安全局少年課. 不良行為少年の態様別補導人員. 少年非行等の概要
(平成19年1~12月)
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen36/syonen20080225.pdf,
平成20年2月, (2009年1月5日にWeb上で確認).
- 厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室. 国民健康・栄養調査 (平成15年~平成17年).
- 厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室. 国民栄養調査(昭和63年~平成14年).
- 東京消防庁: 年代別搬送人員.年末・年始の急性アルコール中毒に注意!飲み過ぎ危険!!
- Grant BF. The impact of a family history of
alcoholism on the relationship between age at onset of alcohol use and
DSM-Ⅳ alcohol dependence: results from the National Longitudinal Alcohol
Epidemiologic Survey. Alcohol Health Res World 22: 144-147, 1998.
- 鈴木健二, 武田綾, 松下幸生.
店因縁者の問題飲酒促進因子についての研究‐未成年者の飲酒問題コホート調査5年後の分析‐. 日本アルコール薬物医学会雑誌40: 559-571,
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- 鈴木健二, 長島洋子, 河野久美子ほか. ヤングアルコホリックの治療経験.
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- Andreasson S, Allebeck P, Romelsjo A. Alcohol
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- National Institute on Alcohol Abuse and
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- 日本損害保険協会交通安全推進グループ. 交通事故死傷者の人身損失額と受傷状況の研究.
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